はじめに
「顎がカクカク鳴る」「口が開きにくい」「噛むと痛む」——こうした顎関節症の症状は、突然始まるものと思われがちです。しかし実際には、日々のちょっとした習慣や噛みグセが積み重なり、知らず知らずのうちに顎関節に負担を与えていることが少なくありません。
本記事では、**食習慣や噛みグセが顎関節症を引き起こす“日常の落とし穴”**について解説し、改善に向けた具体的なアドバイスをお伝えします。当院が大切にしている「科学的根拠に基づいた診断」と「患者さんとのゴール共有」を軸に、毎日の生活に潜むリスクを一緒に見直してみましょう。
1. 硬いもの好きが顎を壊す?食習慣と顎関節症の関係
顎関節は小さな関節ですが、食事のたびに大きな力がかかります。特に以下のような食習慣は顎関節症のリスクを高めます。
硬い食品(スルメ、フランスパン、氷など)を好む習慣
噛む力が強く求められるため、関節や咀嚼筋に過剰な負担をかけます。
片側だけで噛むクセ
片側咀嚼は筋肉のバランスを崩し、顎関節の歪みを招きます。
早食い・丸のみ
しっかり噛まずに飲み込む習慣は、顎の動きを不自然にし、顎関節に微妙なストレスを与えます。
硬いものを完全に避ける必要はありませんが、頻度を控える・食べやすい大きさに切るなどの工夫が大切です。
2. 無意識のクセが顎を追い込む|噛みグセの落とし穴
顎関節症の患者さんの多くは、無意識のうちに顎に負担をかけるクセを持っています。代表的なものは次のとおりです。
片側咀嚼
左右のバランスを崩し、片側の関節に集中したストレスがかかります。
歯ぎしり(ブラキシズム)
就寝中の強い歯のこすり合わせは、関節や筋肉に大きなダメージを与えます。
食いしばり
デスクワークや緊張時に無意識で歯を噛みしめるクセは、慢性的な筋肉疲労や頭痛の原因にもなります。
頬杖やうつ伏せ寝
外力によって顎の位置がずれ、かみ合わせの不調和を助長します。
こうしたクセは「自分では気づきにくい」のが特徴。当院では筋触診や**BruxChecker(ブラキシズチェッカー)**を用いて、患者さんの噛みグセを客観的に可視化し、適切な改善方法を一緒に考えます。
3. 食習慣と噛みグセが重なるとどうなる?
食習慣と噛みグセはそれぞれが顎関節に負担を与えますが、両方が重なるとダメージは加速します。
例えば、硬いものを好む片側咀嚼の方は、筋肉がアンバランスに発達し、顎関節が片側にずれ込みやすくなります。そこに食いしばりが加わると、**顎関節内部の関節円板がズレる(関節円板転位)**リスクが一気に高まります。
さらに顎関節の不調は、次のような全身症状へ広がることもあります。
- 慢性的な頭痛
- 肩こりや首の痛み
- 集中力の低下
- 顔貌の左右非対称
つまり、顎関節症は単なる「顎のトラブル」にとどまらず、全身の健康や見た目にも影響を及ぼすのです。
4. 当院のアプローチ|科学的根拠に基づく診断と治療計画
顎関節症を根本的に改善するには、「食習慣や噛みグセの見直し」と「科学的根拠に基づいた診断」の両方が欠かせません。
当院では以下のような診査診断を行い、生活習慣の影響も含めて総合的に評価します。
- **セファロ分析(頭部X線規格写真)**による骨格・かみ合わせの診断
- CT撮影による顎関節の三次元的評価
- CADIAXによる顎運動解析で関節の動きを詳細に記録
- BruxCheckerで歯ぎしりや食いしばりの傾向を可視化
これらの客観的データをもとに、患者さんと一緒に治療ゴールを共有。矯正治療や補綴治療、スプリント療法などを組み合わせ、**「再発しない顎関節症改善」**を目指します。
5. 日常でできるセルフケアと予防の工夫
食習慣や噛みグセを改善するためには、日々の意識づけが大切です。
- 両側でバランスよく噛む
- 硬いものを控えめに
- デスクワーク中は歯を接触させない(リラックスポジション)
- 就寝時は横向き寝やうつ伏せ寝を避ける
- ストレスを和らげる習慣(軽い運動・深呼吸など)を取り入れる
小さな積み重ねが、顎関節の健康を守る大きな力になります。
まとめ|顎関節症は日常の見直しから
顎関節症は、特別な病気というより「日常のクセや食習慣の積み重ね」で悪化していくケースが多くあります。
硬いものを好む食習慣、片側咀嚼、歯ぎしりや食いしばり——こうした習慣は放置すれば顎関節を傷め、かみ合わせや全身の不調につながります。
しかし、正しい診断と生活習慣の見直しを組み合わせれば改善は十分に可能です。
山口県宇部市の歯科・矯正歯科アールクリニックでは、科学的根拠に基づいた診査診断と、患者さん一人ひとりのライフスタイルに寄り添った治療計画を大切にしています。
「もしかして自分も顎関節症かも?」と思われた方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。