1. 「歯ぎしり・食いしばり」を見える化するツール
皆さんは自分が夜間や日中に「歯ぎしり」や「食いしばり」をしているか、自信を持って答えられますか?
実は、多くの方は無意識のうちにこれらの習慣を繰り返しています。特に睡眠中は自覚が難しく、気づいた時には歯や顎、さらには全身に悪影響を及ぼしているケースも少なくありません。
そこで活躍するのが BruxChecker(ブラックスチェッカー) です。これは、特殊なシートを装着して噛むことで、歯の接触部位が色で可視化される診査ツール。自分の「噛み癖」や「咬合圧のかかり方」を一目で把握できる優れものです。
当院でも総合診断の一環としてBruxCheckerを活用しています。では、このシートを使うとどんなことがわかるのでしょうか?
2. BruxCheckerでわかること
BruxCheckerは、0.1mmの非常に薄いポリ塩化ビニール製シートを患者さんの歯列に適合させ、一定期間装着していただきます。睡眠中や日中の活動時に噛みしめや歯ぎしりが起きると、その部位のシートが削れ、透明になります。
これにより、
- どの歯が強く当たっているか
- 噛み合わせの偏りがあるか
- 上下の歯の接触パターン
がはっきりとわかります。
例えば、片側の奥歯ばかりに跡がついていれば「噛み癖の偏り」、前歯の一部に強い跡がつけば「咬合干渉(噛み合わせの障害)」が疑われます。このようにBruxCheckerは、患者さん自身が目で見て理解できる“診断の可視化ツール”として非常に有効です。
3. 噛み癖が引き起こすリスク
「少しぐらい食いしばっても大丈夫」と思っていませんか?
実は歯ぎしりや食いしばりは、知らず知らずのうちに歯や顎関節へ大きな負担をかけています。
- 歯の摩耗・ひび割れ:強い力でこすり合わせることで歯の表面が削れたり、ヒビが入ったりします。
- 歯肉退縮・知覚過敏:歯にかかる負荷で歯肉が下がり、冷たいものがしみることも。
- 顎関節症:顎の関節や筋肉に負担がかかり、痛みや開口障害の原因になります。
- 頭痛・肩こり・腰痛:噛みしめの緊張が全身の筋肉に波及することもあります。
BruxCheckerで噛み癖を把握することは、こうしたトラブルを未然に防ぐ第一歩です。
4. 当院でのBruxChecker診査の流れ
当院では、BruxCheckerを次のような流れで使用します。
(1)シートの作製
お口の型取りまたは3Dスキャンを行い、個々の歯列に合わせたBruxCheckerシートを作製します。
(2)装着・記録
指定のタイミングでシートを装着していただきます(睡眠中が基本)。翌日または数日後に外して持参していただきます。
(3)咬合パターンの解析
シートの削れ方を観察・記録し、噛み癖や力の分布を解析します。
(4)総合診断への反映
BrxCheckerで得られたデータを、模型診査、X線診査、顎運動検査(CADIAX)、筋触診など他の資料と合わせて分析し、咬合状態を総合的に評価します。
このように、BruxCheckerは単独で診断を行うのではなく、 総合診断の重要な一部として活用しています。
5. 検査後の対応と治療の方向性
BruxCheckerで強い咬合圧や偏りが見つかった場合は、放置せずに適切な対策を取ることが大切です。
スプリント療法(マウスピース)
夜間に装着することで歯や顎関節を保護し、力の偏りを緩和します。
噛み合わせの調整
咬合干渉がある場合は、噛み合わせを適切に整えるための矯正治療や補綴治療を行います。
生活習慣の改善
日中の噛みしめ癖の改善指導を行います。
BruxCheckerの結果をもとに「なぜその部位に負担がかかっているのか?」を分析し、 根本的な原因にアプローチすること が重要です。
6. 自分の「噛み癖」を知ることが治療の第一歩
かみ合わせ治療の進め方の中で、BruxCheckerはとてもシンプルでありながら、得られる情報が多い検査です。
- 自分が想像以上に強く食いしばっていた
- 奥歯ばかり使っている
- 左右のバランスが崩れている
こうした事実を“見える化”するだけで、患者さん自身の意識が大きく変わります。そして意識の変化が、日常生活での改善や治療への積極性につながります。
「歯ぎしりかな?」と思っている方や、顎の疲れ、歯の摩耗が気になる方は、一度BruxCheckerでご自身の噛み癖を確認してみませんか?
山口県宇部市の歯科・矯正歯科アールクリニックでは、 総合診断に基づいた治療方針の提案を行っています。小さな癖を見逃さず、大切な歯や顎を守るためにも、お気軽にご相談ください。